2026年7月13日から26日にかけて、千葉大学大気環境観測スーパーサイト(西千葉キャンパス)において「千葉キャンペーン2026」を実施しました。本キャンペーンは、プロジェクトに依存しない自主的な集中観測として毎年実施しているものであり、SKYNET・A-SKY国際観測網をはじめとする地上観測網や衛星観測データを参加者全員で集中的に解析し、特に学生の研究能力向上を図ることを目的としています。また、参加研究者・学生間の交流を促進するとともに、新しい観測・解析手法を自由な発想で試行し、その成果を将来の大型研究プロジェクトへ発展させることも重要な狙いです。さらに、2026年度から開始したSHIMERI-SKYプロジェクトの一環として、大気下層水蒸気観測技術の高度化と相互比較を推進する場として位置付けています。
観測では、A-SKY/MAX-DOAS、SKYNETスカイラジオメータ、LI-7810によるCO₂・CH₄・H₂O連続観測、COSMOSブラックカーボン計、PM₂.₅計、地デジ放送波を利用した水蒸気観測(DTBW)、GNSS受信機、複合気象計など、多様な地上観測装置を同時運用しました。これらの観測データに加え、気象庁LFM・MSM、ラジオゾンデ、ひまわり衛星、GOSATシリーズ、Sentinel-5Pなどの衛星・数値モデルデータを組み合わせ、温室効果ガス、水蒸気、NO₂、SO₂、HCHO、CHOCHO、エアロゾル、PM₂.₅、ブラックカーボンなどの時空間変動を解析するとともに、観測技術間の整合性評価や、大気下層水蒸気と雷・豪雨など極端気象との関係についても検討しました。
期間中は、梅雨前線の通過、梅雨明け、猛暑日、雷活動など、初夏特有の大気条件の急激な変化を捉えることができました。7月13日には、前線通過に伴う気団変化に対応してCO₂、NO₂、HCHOなどの急変が観測され、15日には、南寄りの風によるフェーン現象の可能性が示される約2 ℃の昇温と、水蒸気・温室効果ガスの変動が確認されました。16~17日には、関東各地で高いMLCAPE環境や雷・豪雨が発生し、A-SKY/MAX-DOASや気象解析を用いた大気不安定場の解析が進められました。
20日の関東地方の梅雨明け前後には、A-SKY/MAX-DOASにより境界層水蒸気量の急激な増加(ジャンプ)が昨年に引き続き明瞭に観測され、季節遷移を特徴づける重要な現象として確認されました。また、DTBW、GNSS、MAX-DOAS、LI-7810など複数手法による水蒸気観測の比較では、各観測手法が異なる高度・空間スケールの水蒸気変動を捉えていることが示され、それぞれの特徴や相補性が明らかとなりました。
さらに、MAX-DOAS、ラジオゾンデおよびメソ解析の比較では、下層可降水量や水蒸気の日変化がおおむね一致し、数値モデルの妥当性を確認するとともに、高時間分解能観測によってモデルでは捉えにくい短時間変動も検出されました。SO₂の高濃度事例では船舶排出の寄与、HCHO・CHOCHO高濃度時には活発な光化学反応や生物起源VOCの寄与が示唆されるなど、多様な大気現象に関する新たな知見が得られました。
本キャンペーンを通じて、複数の観測技術と数値モデル・衛星データを組み合わせた総合解析基盤が強化されるとともに、学生による解析技術の習得と新たな研究課題の創出が進みました。得られた成果は、SHIMERI-SKYプロジェクトをはじめとする今後の研究展開や、極端気象現象の理解および高精度な大気環境モニタリング技術の高度化に大きく貢献することが期待されます。(入江仁士)





