大学院の入試情報が公開されました。進学を考えている方々が、それぞれの立場やタイミングで準備をしていることと思います。今回は、2024年10月に社会人として大学院博士後期課程(博士)へ入学された、神谷さんに伺いました。
神谷義一さんは、2014年3月千葉大学大学院融合理工学府地球環境科学専攻博士前期課程 ( 修士 ) 修了され、現在は千葉県の県立高校の教諭として勤務しています。社会人として、2024年10月千葉大学大学院融合理工学府地球環境科学専攻 リモートセンシングコース 博士後期課程 ( 博士 )に 入学されました。
写真は、勤務校の生徒の皆さんと観測施設の見学に来訪された2023年夏の様子。神谷さんは写真左。
仕事と研究の両立をすることを決意し入学に至るまでの経緯、そして入学から1年を迎えようとす今の生活について、答えていただきました。
Q・博士後期課程へ進学の動機を教えていただけますか。
A– 私は高等学校の理科教員をしています。最近の高校教育は知識の定着だけでなく探究的な力を求められています。具体的には、生徒が自ら問題意識を持ち、課題を設定をして、研究方法の立案して実験・調査を行う力が求められます。このような力は大学の「研究」に近い方法で、今までの教員の指導方法では難しく、教員自身の指導力向上が必要です。また、高校生でも大学レベルの研究をする生徒も増え、そのような生徒に応えられる教員が必要だと考えています。もちろん、私の博士前期(修士)課程で取り組んでいた研究をより発展させ、気候変動予測の向上に貢献したいという気持ちもあったため、博士課程後期に挑戦したいと考えました。
Q・環境リモートセンシング研究センターの説明会への参加や入江先生への相談はされましたか。
A– 説明会へは参加しました。それぞれの研究室ではどのような研究がおこなわれていて、自分のやりたい研究とマッチするかを確認することは大切だと感じたからです。入江先生とも数回相談させていただきました。
Q・千葉大学 入江研究室を選んだ理由を教えてください。
A– リモートセンシングの研究では、衛星データや地上観測データなど多様な観測機器データを扱います。私はエアロゾルと雲の相互作用の研究したいを考えていたため、衛星データなどの広域観測だけでは把握できない詳細な情報が必要でした。さらにエアロゾルや二酸化炭素という地上からの発生が考えられるものが対象であるため、地上観測が不可欠であると考えました。地上観測と衛星データを両方を用いた統合的な研究ができる入江研究室を選びました。
Q・勤務先との調整はどのように行われましたか?
A– 同僚や管理職と相談しながらすすめました。博士課程後期の授業単位数とゼミの日程などを事前に調べ、職場に要望を出して配慮してもらいました。
Q・出願について流れなど、具体的に教えてください。
A– 入江研究室だけでなく、他大学や他研究室をインターネットで検索しました。そこで仕事と両立ができ、自分の研究テーマが実現できる研究室を絞り、研究室の先生に直接会って相談しました。当時は抽象的だった研究内容を、オンラインも含めて入江先生と相談を重ね、研究計画書を完成させました。
Q・入学前にどんなことが不安でしたか。それは、どのように乗り越えたでしょうか。
A– 毎日大学に行くことができないため、研究室の学生とコミュニケーションが取れるだろうかと心配でした。また、先生方と充分に議論する時間があるのかも不安でした。
入江研究室では、Slackをはじめいつでも連絡や相談ができるため、問題ありません。
Q・院試で大変だったこと、意識したのはどのようなことでしたか。
A– スライドによる口頭発表でしたが、自分の研究をどの程度まで実現可能なレベルにしていくかが大変でした。先行研究の調査が不十分で、課題の明確化や研究手法があいまいだと感じています。意識したことは、「結果として何を得たいのか」、「そのためにどんな機器を使って、どんなデータを得るのか」など非常に細かい部分を丁寧に伝えるということでした。
Q・入学前後の研究テーマについて教えていただけますか。
A– 大学院に入学してから研究を始めていくと、周りの学生がどのようなものに注目しているか、どんな観測機器データを取得できるかがわかります。助言ももらえたため、エアロゾルという粒径サイズ範囲が大きなものではなく、ブラックカーボンに注目して解析をしています。
Q・教員としての生活を学業の両立については、いかがですか。
A– 平日は勤務であるため研究は行っておらず、帰宅後にデータを取得して研究をしています。リモートセンシングの場合、常に研究室に行かなくてもデータを取得できればどこでも解析ができるため都合がよいです。休日は大学や自宅で研究をしています。
学会やゼミでは、主にオンラインで参加していますが、有休を取って現地で参加することもあります。
Q・入江研究室のよさは、どのようなところだと思いますか。
A– 地上観測機器などのデータ取得だけでなく、その装置の設置などにも携われることは貴重な経験だと思います。なぜデータに異常値が発生するかなど、考察の幅が広がります。衛星データだけでなく多様な機器データを扱えるため研究する幅が広く、他の学生の研究に刺激を受けます。様々な解析方法の中なら目的に応じて生かすことが可能です。
Q・研究や学会参加についてはかがでしょうか。
A– 自分の研究成果がどの程度のものかは、自分だけではわかりませんので、ゼミや学会で発表を積極的に行い、研究を発展させられたらうれしいです。
Q・博士前期課程の在学当時との違いや、社会情勢やご自身の環境についても教えてください。
A– 博士課程後期では、自分の意思が大切になってくると思っています。成果が重要だと思うので、常に目的意識をもって研究を進めています。
・社会人大学院生として大学院進学を考えているみなさんへ
– 社会人で大学院生になると決意したときに、いろいろな人に相談をしましたが、みなさんが背中を押してくれました。正直、「今から研究するの?」などの消極的な意見があれば、大学院への挑戦はしていないと思います。入江先生をはじめ受け入れてくれた千葉大学の方々も、温かい言葉をいただきました。そうした環境で研究できることは、忙しい社会人にとっても大きなやりを感じると思います。
・研究室の後輩みなさんへ
– 研究は過去の蓄積があるからこそ、新たな疑問や解決すべき問題点がより明確になるのだと思います。先輩の研究を引き継ぎ、より深く掘り下げることで、社会的に大きな影響を与えられる研究へと発展していくと信じています。自分の研究は小さなものでも、いずれ合わせて大きなものになっていくはずなので、一人ひとりの研究がとても大切です。どうか研究を頑張ってください。
・お忙しい中、どうもありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。
神谷 義一 | メンバー | 入江研究室(地球大気環境研究室)
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木更津高校の神谷先生と生徒さんが観測サイトの見学に来校されました | 入江研究室(地球大気環境研究室) 2022年