こんにちは、入江研究室B4の横田です。
さて、この度は夏に引き続き、秋の山行について記事を執筆させていただけることになりました。
秋の山は、紅葉が綺麗なことや冬に向かっていくどこか寂しいような雰囲気が味わえてなかなか良いのですが、季節が冬とせめぎ合っているため天候の判断や準備が大事になります。
そういった厳しさにも触れながらお話しできればと思います。
秋(10月)は、以下の3つの山に行ってきました。
山行① 五竜岳 ~遠見尾根~ (北アルプス)
山行② 甲斐駒ヶ岳 ~黒戸尾根~ (南アルプス)
山行③ 那須岳 ~三斗小屋温泉~ (栃木県)
まずは、山行① 五竜岳 遠見尾根 (北アルプス) です。
五竜岳は、北アルプス北部の後立山連峰の1つで百名山にも選ばれ、標高は2814 mです。
今回は、長野県白馬村の白馬五竜スキー場からゴンドラを利用し、遠見尾根と呼ばれるコースを日帰りで往復しました。夏に色々な山に登ったことを経た力試しの意味で1人でチャレンジしました。1人で登ることは、ソロ登山と呼ばれ、行程やペースを自身の都合に合わせて変更できる自由がある反面、様々なリスクを予想し、トラブルが起きた時には自分自身で対処しなければいけません。そういった力をつけるといいう意味でも有意義であると考えました。また、ソロ登山者同士、一期一会の会話を楽しめるのも魅力です。
遠見尾根のコースタイムは12時間ですが、ゴンドラの運行時間が朝7時30分から16時30分であるため、タイムリミットは9時間です。間に合わなければただでさえお金のない大学生に延長運転料金が課されます。果たして間に合うのでしょうか?
千葉から車を走らせること約4時間、登山口の長野県白馬村に到着です。
ゴンドラで標高差700 mを一気に登ります。
ゴンドラ山頂駅から登山スタート。ここから山頂までは標高差が1300 mあります。
奥に見えてきたのは…
五竜岳のお隣の山、鹿島槍ヶ岳(標高2889 m)です。
よく見ると山頂の下に黒ずんだ氷の塊があるかと思います。
これ実はカクネ里氷河と呼ばれる氷河なんです!
(日本に現存する7つの氷河はすべて北アルプスの北部にあります。)
これよりも高い山は北アルプスにはたくさんありますが、この地域は日本で一番北に位置する3000 m級山岳のため、夏の気温が低く、さらに豪雪地帯であることから氷河が形成されました。
登り進めること2時間半、山頂が見えてきました。ここからはヘルメットを装着し、岩場を越えていきます。
しかし、山頂に着いたときには、一帯が雲に包まれ眺望は無くなっていました。
こういった雲のことをガスと呼びます。朝一番はこういったガスは無く、良い景色が見られることが多いのですが、気温の上昇に伴って上昇流が発生し、昼頃にはガスが麓から湧いてきて眺望は見られなくなることが多いんです!残念でした…
しかし、こういう時にしか見られないものもあります。
それがライチョウです。中部山岳の高所でしか見られない、氷河時代の生き残りの生物です。
天敵である猛禽類を避けるため、曇ったときによく見かけることが多いです。
漢字では雷鳥と書きます。雷には遭いたくないですね。
雷鳥撮影会にかなり時間が吸われましたが、ゴンドラのミッションも残っています。
紅葉を見ながら下山です!
そしてなんとか、7時間で歩き切り、ゴンドラに間に合いました!
次は、山行② 甲斐駒ヶ岳 黒戸尾根 (南アルプス) です。
甲斐駒ヶ岳は、南アルプスの最北部に聳える標高2967 mの百名山です。
登山口としては、長野県側からアクセスする標高約2000 mの北沢峠がポピュラーですが、今回は山梨県側の竹宇駒ヶ岳神社から登る古くからの修験道、黒戸尾根コースで登ってみました。このコース、実は標高差が2200 mもあるのです。
(ちなみに、富士山の標高差は約1400 mです。)
日本三大急登に数えられるハードコースですが、夏に北アルプスの剱岳に登った友人と挑戦してみることにしました。
神社に参拝させていただき、
橋を渡ると、
登山スタートです。
一合目の標高は1270 m。登山口の標高は770 mだったので、500 mの標高を登ってようやく一合目です。
(筑波山でこれだけ登れば既に山頂に着いています(笑))
二合目。標高1600 m
三合目付近。標高を上げるにつれ、植生が変化し、森の雰囲気がどんどん変わっていくのが分かります。
視界が開け、岩場も登場しました。
木々も色付いてきました。
そして気が付くと雲の上にいました。
そして、ようやく登頂しました。
樹林帯からスタートして、森の雰囲気がどんどん変わり、紅葉で色づき、ついには木も生えなくなって花崗岩を歩くようになり、雲の上の世界へ。
体力的にはきついですが、こうした変化が楽しめる味わい深い山旅になりました。
七合目の小屋で一泊し、帰り道も2200 mの道のりを駆け下りました。
最後に、山行③ 那須岳 三斗小屋温泉 (栃木県) です。
え、栃木?これまでアルプスのお話しをしていた分、少しばかり身近に聞こえますよね。
でも実はこの山、標高は1915 mと2000 mにも満たないのですが怖い山でもあるのです。
昨年、10月6日のこと。10月にも関わらず冬型の気圧配置が強まり、那須岳の稜線では、北西の風が容赦なく吹き付けました。那須岳は北西側に高い山岳が存在しないことから日本海側からダイレクトに風が入ってくることで強風の吹きやすい山と知られており、特に稜線のくぼんだ部分である鞍部では風が強まります。
この時の平均風速は30 m/sをも超え、低体温症により4名の方が亡くなられる遭難事故となってしまいました。
今回、当初は那須町の「峠の茶屋駐車場」からの入山を考えていましたが、登山2日目の強風(20~23 m/s)が予想されていたため、風の影響の少ない「沼ッ原駐車場」に変更し、無理をしない計画にしました。
1日目は、晴れの中で湿原からスタート。
木々も色付いています。
那須岳は火山の山。噴火したらひとたまりもないです。
歩くこと、約6時間。山の中に突然こんな看板が…
三斗小屋温泉煙草屋さんという山小屋で、豪華な夕朝食と野天風呂付きなんです!
サッポロ黒ラベルの歩荷にも挑戦。重量が8 kgあって大変でしたが、
宿代1000円引き+1ドリンク。貴重な経験をさせていただきました。
この小屋で出てくる食事は歩荷といって人の手で運んだおかげなんです。
温泉に癒されて良い時間を過ごせました。さあ、2日目無事に帰るだけです。
朝から雨模様。風の吹く音が大きく聞こえます。
雨の山も雰囲気があってこれまた良いものです。
熊にも遭うことなく、無事に下山できました。
稜線はかなりの強風が吹いていたことでしょう。
以上、秋の山行をご紹介させていただきました。
氷河や雷鳥を見てロマンを感じたり、高度差による気候の違いが生む植生の変化を感じたり、天候判断が命取りになることをひしひしと感じたりと勉強になることが多かったです。
本業の研究を頑張り、また安全に登山ができる日を楽しみにしています!
今回も長い文章になりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。