世界最先端のリモートセンシング技術による地球大気環境変動研究の推進
―気候危機の緩和および適応に向けて―
最大の地球環境問題のひとつとして人類の持続可能性までも脅かしている気候変動の影響が「気候危機」として世界各地で顕在化してきています。気候危機の原因が人間活動にあることは疑う余地はなく、その緩和および適応に向けた対策が急務となっています。
そういった対策に不可欠な人間の行動変容をもたらす科学的知見(予測など)を入江研究室の重要なアウトプット(y = f(x))と位置づけています(データ駆動型社会への貢献)。ここで、xはいわば「事実」とみなせる観測データなどを指します。xは地球科学においてはその要素が多変数であり、また、不確実性を持つことに注意が必要です。fは数値シミュレーション・同化モデル・人工知能(AI)・機械学習などをツールとしたデータサイエンスに基づいて、インプット(x)をアウトプット(y)に変える関数と考えます。関数fも完全ではないので不確実性を持ち、それがyの不確実性へ伝播します。
こういった考えのもと、高確度・高精度な科学的知見yを入江研究室からアウトプットするために、以下3つに大別した位置づけにおいて、入江研究室では関連の地球大気環境変動研究に取り組んでいます。
1)世界最先端レベルの質・量の地球大気環境観測データの取得、QA/QC、および高度解析
【xの向上】
2)地球科学プロセス(特に大気環境変動)の解明(真理の追求)
【理学の視点からのfの向上】
3)最適なデータサイエンス技術の提案
【工学の視点からのfの向上】
地球大気環境変動研究において、リモートセンシング技術は地球規模で長期にわたって均質なデータをもたらす唯一の方法であり特に重要です。入江研究室は、独自の世界最先端のリモートセンシング技術・データなどを基盤に、国際地上リモートセンシング観測網を主導して広く国内外の研究機関と国際共同研究を進めています。衛星リモートセンシングも組み合わせ、ローカルだけでなくグローバルにも顕在化している様々な予測困難な(大気)現象※に特に着目して、地球大気環境変動研究を推進しています。このようにして高確度・高精度な科学的知見yを入江研究室からアウトプットしていき、人類の持続可能性を脅かす要因を取り除いて、安心安全な地球環境の実現を目指しています。
※例えば、人間活動に伴う大気汚染・大気環境変動、線状降水帯などの極端気象現象、森林火災、雷活動、火山活動
エアロゾル光学的厚さの衛星データ(MODIS)。右下に記載の年の平均値を示しています。
エアロゾル光学的厚さの衛星データ(MODIS)。右下に記載の年の平均値をアニメーションで示しています。
対流圏中の二酸化窒素(NO2)のカラム濃度の衛星データ(TROPOMI)。右下に記載の年の平均値をアニメーションで示しています。
左と同様の図ですが、西日本から東日本の領域を拡大して示しています。
千葉大学大気環境観測スーパーサイトで観測している大気境界層(高度0~1 km)の二酸化窒素(NO2)濃度の日平均値の推移(赤)。過去10年以上にわたって観測されたデータの平均値が青で、最大値と最小値の範囲が灰色で示されています。
千葉大学大気環境観測スーパーサイトで観測している大気境界層(高度0~1 km)のオゾン(O3)濃度の日平均値の推移(赤)。過去10年以上にわたって観測されたデータの平均値が青で、最大値と最小値の範囲が灰色で示されています。
千葉大学大気環境観測スーパーサイトで観測している大気境界層(高度0~1 km)の水蒸気(H2O)濃度(体積混合比)の日平均値の推移(赤)。過去10年以上にわたって観測されたデータの平均値が青で、最大値と最小値の範囲が灰色で示されています。
千葉大学大気環境観測スーパーサイトで観測している大気境界層(高度0~1 km)の二酸化硫黄(SO2)濃度の日平均値の推移(赤)。過去10年以上にわたって観測されたデータの平均値が青で、最大値と最小値の範囲が灰色で示されています。