猛暑が生物起源VOCsに及ぼす影響の解明に向けて
-高山試験地でのMAX-DOAS連続観測開始とA-SKYの発展-
秋をスキップして急な冬の訪れを感じる11月29~30日に高山試験地・TKYサイト (Takayama Deciduous Broad-leaf Forest; 高山落葉広葉樹林サイト)(北緯 36 度 8 分、東経 137 度 25分、乗鞍岳の山腹標高 1400 m)にて入江研究室が主導している国際観測網A-SKYの主力観測機材であるMAX-DOASを設置し、連続観測を開始しました。高山試験地は、東海国立大学機構岐阜大学高等研究院環境社会共生体研究センターの施設であり、主に炭素循環研究を推進しています。
生物起源揮発性有機化合物(Biogenic Volatile Organic Compounds; BVOCs)は生態系から放出される揮発性有機ガスの総称で、炭素数5, 10の炭化水素であるイソプレンやモノテルペン類が代表例として挙げられます。植物から放出されるBVOCsは、森の⾹りを⽣み出すとともに、エアロゾル⽣成を介して太陽放射収⽀や降⾬量を左右することや、対流圏のオゾン⽣成にも寄与することが明らかとなっています。しかしながら、ここ数年、日本を襲っている猛暑によって植物がどのように応答し、BVOCsの放出量を変化させているかはよく分かっていません。こういった猛暑がBVOCsに及ぼす影響の解明などに向け、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物を測定できるMAX-DOASによる連続観測を開始しました。高山試験地では既にスカイラジオメーターによるエアロゾル・雲の連続観測がされており、両観測機器を配備したA-SKY国際観測網の新しいサイトにも登録されることになりました。今後の観測データとそこから得られる成果を楽しみにしています。(入江仁士)