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CReSSを用いたデータ同化の研修に参加して

こんにちは。入江研究室B4の溝渕です。

先日の5月30、31日につくばにある防災科学技術研究所において、CReSSを用いたデータ同化の研修に参加してきました。名古屋大学院の方々とともに2日間、CReSSの概要や実行方法について学びを深めました。今回はその研修の目的や学んだことについてまとめます。

参加した背景

まずは今回参加した背景についてお話します。結論から言うと、今後研究を進めていく上で、データ同化の手法を学ぶことが必要不可欠であるためです。

私たち千葉大学入江研究室は、大気汚染物質だけでなく水蒸気の観測にも優れた性能を持つMAX-DOASという装置を用いています。この装置は太陽光を光源として使うため、マイクロ波放射計や水蒸気ライダーなどと比較して非常に安価であり、コストパフォーマンスが良いといえます。線状降水帯を含む積乱雲の起源である大気下層の水蒸気を観測できる数少ない装置です。また、つくばサイトにおいて2011年から2021年のデータに基づいて分析した結果、高度0-1kmのラジオゾンデとの相関係数が0.96と非常に良い相関を示しています。

課題と目的

水蒸気観測をする大きな意義として、線状降水帯を始めとする極端気象の予測精度向上に役立てる、ということがあります。

そのためMAX-DOASを用いた水蒸気観測の有用性を示すには、取得したデータを数値予報モデルにデータ同化し、その結果がどれほど改善するかを示す必要があります。つまり、データ同化のプロセスを理解し習得することが欠かせません。

それゆえ、今回の研修で私が目指したのは、気象モデルCReSSについての知識を深め、自分自身でデータ同化を実行できるようになることです。

データ同化とは?

先ほどから出てきているデータ同化について詳しく説明します。データ同化とは、数値予報モデル(コンピュータ上でのシュミレーション)の精度を向上させるための手法です。

数値予報は物理の運動方程式をもとにコンピュータ上でシミュレーションを行いますが、その計算はのみでは現実の大気の状態を反映しきれません。ここにMAX-DOASなどの観測値の情報を加えて、現実の大気の状態に近づけるのがデータ同化と呼ばれる手法です。

CReSSとは?

次に今回研修で学んだCReSSというモデルについて説明します。

CReSSとは(Cloud Resolving Storm Simulator)の略称で、その名前の通り、雲スケールからメソスケールの現象の高精度シミュレーションを行うことを目的として、名古屋大学の坪木教授らにより開発が進められてきた気象モデルです。CReSSは今回お話を伺った清水先生の所属する防災科研を始め、国内外を問わず多くの研究機関や企業の研究で用いられています。

研修の概要

次に、研修の概要について説明します。5/30-31の2日間防災科研にて、清水先生のご指導の下、名古屋大学の大学院生、ポスドクの方の方とCReSS研修を行ってきました。

初日はCReSSやその手法である3次元変分法、またCReSSの実行に必要なドキュメントの説明について、2日目はLinuxの操作から実際に防災科研のスーパーコンピュータを用いて実際にデータ同化を行う演習をしました。

研修で学んだこと

今回の2日間のCReSSの研修を通じて、書籍など情報が少ないCReSSについての知識を深めたり、実行するための細かい設定の意味などを知ることができました。

また、他の研究者の方とも交流することで入江研究室の強みを再認識し、目指していくべき研究を明確にすることができました。

今後の展望

今後の展望としては、自ら取ったデータを使ってデータ同化を行うこと、これまで私が研究してきた大気の安定性と水蒸気の空間変動との関係についてもデータ同化に反映させてみることを目指していきます。そしてそれを踏まえた上で、データ同化にMAX-DOASのデータを使用すべきであるという提言につなげていきたいと考えています。これからもよろしくお願いいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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